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尾道市因島 柿渋

いんのしまみち おおはまみち なかのしょうみち みつのしょうみち 

 

因島の柿渋についてのページです。共著者:sumihara、623crystal

 

因島は柿渋の産地だった。いつの頃のことか忘れたが、毎年秋になるとNHKのローカルニュースで因島中庄町で特産の柿渋の生産が始まった、報じられた。そして、その主な用途は漁網の補強ということであった。

 

因島の柿渋生産については、今井敬潤氏の「柿渋」(法政大学出版局、2003)に詳しく記されている。同書を元に、因島の柿渋作りについて記す。

 

現在、柿渋については三庄、中庄、大浜、田熊、三浦村などで、かつて生産されていたことがわかっている。

 

大正初期の因島の主たる柿渋製造業者

 中庄村(四軒) 村上武吉・小林兵三郎・宮地卯助・杉浦高吉

 三庄村(四軒) 楠見伊八・青井武太郎・岡本軽次郎・住原寿助

 三浦村(二軒) 平沢勘蔵・谷本治作

 大浜村(二軒) 村上興三郎・麓新助

 田熊村(一軒) 岡野作太郎

 今井敬潤「柿渋」p.185

 

 

柿渋の用途

 漁業用の網の補強、番傘の補強、建築材など。

 

化学的原理

 タンニンの酸化反応

原理

 渋柿を搾り、発酵させたものを使い、空気酸化させる。

 

因島での状況

 畑や山で育った渋柿を熟す前に採取し、磨り潰して渋液を採取する。それを保管し熟成させる。

 

事例

三庄 

 住原家の場合 ➡️ 写真 住原家柿渋製造所

柿渋 戦前は盛ん
販売先
九州一円、台湾、満州大連、岡山下津井漁業組合、奈良の渋組合の人が来るもこともあった。
3斗半の樽で鉄道便で送付。
用途
漁網の防腐剤、ナイロンの網が出来るまでは盛んに使われた。
漆に混ぜる。
傘屋の添加剤
酒屋の添加剤
高血圧の薬 玉渋:何年か熟成をさせた柿渋
和紙に塗って染色の型紙
渋屋
三庄:3軒、大浜:1~2軒、中庄2~3軒
時期
青柿を9月加工
人手
御調、松永、弓削
5~6人、4~5人、何週間かで終わり。
材料
船で波止場まで運んで イグリで担いで倉庫の2階へ担ぎあげる。
発動機からベルトでシュレッダーへ回転を伝える。
シュレダーで砕いて、更に石のローラーで潰して 舟へ入れる。船は4艙あった。
舟からは大きなねじ式のジャッキで大きなレバーを付けて人が回して絞り出す。
樽は20~30

 

資料

かきしぶ【柿渋】渋柿の若い果実から搾った汁を発酵させ濾(こ)した液。漆器の下塗りや,木麻紙などの防水防腐剤として塗る。(国語辞典)

 

タンニン [英 tannine, tannin 仏 tanin, tannin 独 Tannin, Gerbstoff ] 植物界に広く存在する物質で,加水分解によって主として没食子酸などの多価フェノール酸を生ずる混合物の総称.収斂作用をもつ.ふつうのタンニン,すなわち没食子や五倍子から得たものは,加水分解により没食子酸のほかに少量のグルコースを生ずる.ほとんど無色の無定形物質で,水に溶けやすく,水溶液は酸性を示し,鉄(Ⅲ)塩によって黒色の沈殿を生じる.この性質を応用してインクをつくる.タンニンはタンパク質,ゼラチンを水に溶けない物質に変えるので,なめし剤としても,また媒染剤,医薬としても用いる. 出典:理化学辞典第5版

 

タンニン酸 [英 tannic acid 仏 acide tannique ] C14H9O10 

m‐ガロイル没食子酸ともいう.没食子酸のデプシド.ふつうのものは二水和物の結晶.融点268℃(分解).苦味をもち,コロイド溶液を沈殿させるなど,性質はタンニンに似ている.タンニンの加水分解で生ずる.なお,タンニンをタンニン酸ということもある.

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出典:理化学辞典第5版

 

 

没食子(もっしょくし)gallはある種の寄生虫の作用によってできる植物組織のこぶ状突起物である。その虫が樹皮や葉を刺してそこに卵を生みつけ、幼虫は没食子の中に住みそれを食べる。かしの葉の没食子はくりの実に似ておりナットゴールと呼ばれる。ナットゴールを水で抽出すると約50%の収率で、最初は無定形の非常に収斂性の強い物質が得られるが、これは皮をなめす性質をもつのでタンニンまたはタンニン酸と呼ばれる(tan なめす)。獣の皮はにかわ状になる水に不溶のコラーゲンを含み、多官能性のタンニンは隣接するタンパク質の繊維間を相互に連結するから獣皮からなめし革が得られるのである。タンニンはこのほかうるしの乾燥した葉の粉、お茶の葉、かしの樹皮、くりなどからも得られる。

L.F.FIESER、M.FIESER著、後藤俊夫他訳「フィーザー最新有機化学Ⅲ」(丸善、昭和47年2版)p.79

 

 

「柿渋」を採るには、渋ガキの青い実のへたを除き、つき砕いて水を四倍量加える。布袋へ入れてしぼって貯えると褐色になる。柿渋は普通、半年以上置いたものを、高血圧、しゃっくり止め、夜尿症などに一回量一〇㌘を水で薄めたり、大根おろしを加えるなど飲みやすくして使う。また、しもやけ、かぶれ、外傷、やけどなどには柿渋を塗るとよい。柿渋は薬局でも求められる。

柿渋の主な用途には友禅染などの型つくり、日本酒のにごり取り、酒しぼり用の袋の染色などがある。渋ガキのなかでも特にアブラガキが渋を採るのに適しているといわれる。

奥田拓男監修「岡山の薬草」(山陽新聞社、平成4年6刷)、p.86

 

 

 

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