1992年3月
1992年3月23日月曜日。雨時々曇り。
今日まで日記が空白なのは、ただひたすら狂ったように物理を勉強していたからである。その間に日記も小説も授業ののプリントも実験の準備もすべてが愚かしく思えて、手がつかなった。その気持ちは今も変わらないのだが、このまま物理の勉強を続けてもどうなるものでもなく、このへんでチェンジしなければ僕の人生はこれだけで終わってしまう、というような気持ちにかられて、ワープロのスイッチを入れたものの、気持ちは、早くワープロを切って物理と化学の本を読みたいというのが本音である。
1992年3月24日火曜日。晴れ後雨。
朝から因島へ帰る。早春の瀬戸内は気持ちがいい。野山は枯れ木に覆われているものの、ところどころにうすいみどりが見えて、春を告げている。窓を開けて走った。本の整理。
三島の「純白の夜」(角川文庫)、ヘンリー・ミラーの「セクサス」(新潮社)を読み始める。
1992年3月26日木曜日。雨。
昨日は朝から車で学校へ行く。学籍簿の記入。夕方帰り、物理の本を読む。夜は早く寝る。「暗闇坂の人喰いの木」を夜、少し読む。他に、「セクサス」、「純白の夜」、「ボヴァリー夫人」。
1992年3月27日金曜日。雨。
毎日のように雨が降る。
物理を中心に本を読む。
夜中に「暗闇坂の人喰いの木」をずっと読む。
1992年3月28日土曜日。雨。
朝の三時半頃に「暗闇坂の人喰いの木」を終えて寝る。
すごい小説だと思う。横溝の再来だ。カーの「魔女の隠れ家」と横溝の「悪魔の手毬唄」とこの三作が私の選ぶ怪奇ミステリーのベスト3である。
この作品は続編が書かれなければならない。
また、こういうものを読んでいると、ここまで小説として書いていいものだろうか、と思ったり、また、推理小説を書こうということ自体に嫌気がさしてくるのと感じた。
朝遅い起床。ずっと 物理の本を読む。午後ダイイチへテレビを見に行く。
夜もずっと物理。
1992年3月29日日曜日。雨。
朝から物理の本を読む。
夜、推理小説を書き始める。いつまで続くやら。
素粒子論のところはもう一度読み直してみることにした。
1992年3月30日月曜日。晴れ。
久し振りに晴れた。午前中は物理の読書。
平家物語の視点がよくわかった。見事な入門書であるとともに、著者の世界観の反映である。文学論はこのようでなければならない。客観性も保持しつつなおかつ個人見解を差し挟む。平家は最近水上勉のダイジェストを読んだが、やはり色々なテキストで読むのがおもしろい。
1992年3月31日火曜日。晴れ。
朝、HemingwayのIndian Camp を読む。
ダイイチからテレビ配達される。その後、衛星放送受信用アンテナを取り付ける。午後てガレージの屋根をつけてくれるのを手伝う。